【IFDA(国際家具デザインコンペティション旭川】最高賞に「ハグ」の椅子 シュ・ユコウ氏(中国)が受賞

2024/06/20 00:00

界を目指す若手デザイナーの登竜門「IFDA(国際家具デザインコンペティション旭川)」の審査結果が6月19日、北海道旭川市の旭川デザインセンターで発表され、シュ・ユコウ氏(中国)の「ハグチェア」が最高賞のゴールドリーフ賞を受賞した。34年間12回目となるIFDAで、中国の作品が最高賞を受賞したのは初めて。昨年6月に応募が行われ、建築家の藤本壮介氏を委員長に審査が行われた。試作品は、カンディハウスがニレ材を使い、5軸CNCを駆使して製作した。
 「初めて日本に来てから、きょうここにいるまでの間を振り返ると本当に胸がいっぱいで何も申し上げることができない」とシュ氏は、感極まり言葉を震わせながら、受賞の喜びを語った。
 彫刻作品のような「ハグチェア」について、同氏は「この作品をどこかで見ることがあれば『手を触れないでください』という掲示は取ってほしい。手で触れて、触っていただくための椅子」と説明した。作品名の通り背を抱きながら座るなど、さまざまな姿勢にフィットして木の温もりを体で実感できる。
 同氏は、建築家として日本で勤めたことがあり「世界をリードする建築に関わってきたが、私の中でこの椅子は、意味のある重要なもの。私の持つ全てのエネルギーと情熱をこの椅子のデザインにささげた」という。
 「旭川にいる皆さんの家具のデザインと製作への強い情熱を感じた。特に(カンディハウスの)山田(明浩)さんには、この作品を作っていただくためにご尽力をいただき、素晴らしい形に仕上げていただいた」と感謝を述べた。

最高賞のゴールドリーフ賞を受賞を受賞した「ハグ・チェア」


 結果発表前日の18日には、作者によるプレゼンテーション審査が初めて行われた。藤本氏は「デジタルが広がり、世界規模でいろいろなことが起きる中で、リアルなものと、対面のコミュニケーションの大切さを実感できた。ハグチェアに座って、まさにリアルの素晴らしさを感じた」と評価した。
 作品名を発表した審査委員の廣村正彰氏(グラフィックデザイナー)は「最初から異質なもの、なにかひっかかったものを感じて議論を重ねた。これからの家具はどうなるのか、人間との関わりを考え直す作品。心に癒しを与える作品として賞を与えたいと思った」と選考理由を語った。
 シルバーリーフ賞(長原實賞)は、北原悠唯氏「ユーアームチェア」、ブロンズリーフ賞は可児美帆氏「ドロワー・アンド・シェルフ」とコンラッド・ロヘナー氏(独)「ドラギ」の2作品、メープルリーフ賞は山内敏行氏「イスノキ・チェアーズ・ツリー」が選ばれた。
 IFDAの審査は、藤本氏、廣村氏、アン・ルイス・ソマー氏(デザインミュージアム・デンマーク館長)、タッカー・ヴィーマイスター氏(米インダストリアルデザイナー)、マイケル・ヤング氏(英インダストリアルデザイナー)ら5人で行われ、表彰式後に各審査委員が作品を語るトークショーが行われた。

シルバーリーフ賞(長原實賞)を受賞した北原悠唯氏「ユーアームチェア」

ブロンズリーフ賞を受賞した可児美帆氏「ドロワー・アンド・シェルフ」㊧とコンラッド・ロヘナー氏(独)「ドラギ」㊨

メープルリーフ賞を受賞した山内敏行氏「イスノキ・チェアーズ・ツリー」